生物機能科学研究室

岡研究室

糸状菌の形がつくられる秘密を解き明かす!

糸状菌には、古来より発酵食品の生産に用いられてきた「麹菌」に代表されるような人類の食と健康に役立つ菌種がいます。一方で、アフラトキシンB1といったカビ毒を産生して農作物を汚染したり、農作物やヒトに感染して病気を引き起こす、人類の食や健康を脅かしてしまうような菌種もいます。糸状菌は読んで字の如く糸のように細長く細胞増殖して生育範囲を広げていく微生物です。糸状菌が良いことをするにも悪いことをするにも菌糸を伸長させることが必要不可欠です。良い糸状菌をより有益に利用したり悪い糸状菌をやっつけるためには、菌糸の伸長メカニズムを理解することが必要となります。菌糸の伸長は、主に菌糸の先端で活発に起こっています。菌糸の先端では何が起きているのでしょうか?菌糸の先端では、新しい細胞壁がつくられています。私たちは、糸状菌の細胞壁がどのようなメカニズムでつくられていくのかを明らかにすることで菌糸の伸長メカニズムを理解しようとしています。具体的には、細胞壁の生合成するために必要な「糖転移酵素」を新しく見つけて、機能や構造を明らかにする研究を進めています。

1. 糸状菌の細胞壁がつくられるメカニズムを解明する!

糸状菌の細胞壁は糖がいくつも結合した「糖鎖」という物質からできています。「糖鎖」は一般的に細胞外や細胞の表層にあるので、病原性糸状菌の「宿主細胞と最初に接触する分子」であると言えます。このことから細胞表層の「糖鎖」は、病原性糸状菌の感染機構や毒性の発揮機構に関与していると考えられています。ガラクトマンナンは、糸状菌の細胞壁を構成する糖鎖のうち最表層を覆っている糖鎖の1つとして知られています。また、ガラクトマンナンはヒトを含む脊椎動物や植物には存在せず、子嚢菌門のうちチャワンタケ亜門に属する菌種が有する糖鎖です。チャワンタケ亜門には、アスペルギルス属のみならず、イネいもち病原菌、白鮮菌などの多くの植物病原性真菌や人畜病原性真菌が含まれています。「病原性糸状菌の感染機構」や「宿主側が有する免疫機構」とガラクトマンナンとの関わりを明らかにするためには、ガラクトマンナンの生合成に関わる遺伝子や酵素が同定される必要があります。そこで、私たちはアスペルギルス属の細胞壁の合成がどのように行われているのかということを解明するために研究を進めています。特に、ガラクトマンナンの生合成に着目しています。これまでに、ガラクトマンナンの生合成に関わる遺伝子を世界に先駆けて見つけることができています。


2.細胞壁を標的とした新しい抗真菌薬を開発する!

近年、抗がん剤の投与や、骨髄移植・臓器移植に伴う免疫抑制剤の投与、エイズ患者の増加などの要因によって深在性真菌症は増加しています。しかし、人類がこれまでに開発できた抗真菌薬は、作用機序を基に分類すれば20種類にも満たないと言われています。また、アスペルギルス症の治療薬であるアゾール系抗真菌薬に対する耐性株が出現しており、世界的な脅威となっています。そこで、これまでと異なる作用機序を有する抗真菌薬の開発が急がれている状況です。私たちは細胞壁の生合成を阻害することができる薬剤がヒトや作物に対する副作用のない抗真菌剤として、医薬や農薬に利用することができると考えて研究を進めています。

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