微生物学研究室
有用微生物は機能性を高め、病原性真菌は撃退する!!
微生物学研究室では、有用微生物の機能性開発と病原性真菌の制御(抗真菌薬開発)を両輪とし、未知の遺伝子・酵素の探索を通じて生命現象を分子レベルで解明することを目指した研究を進めています。微生物は目に見えないけれど、私たちの生活を支えています。私たちは、麹菌、出芽酵母、納豆菌などの有用な微生物の機能性を高めるための研究や、逆にヒトの健康や農作物の生育を脅かす病原性真菌を撃退するための研究(抗真菌薬の開発)を行っています。さらに、生命の神秘に迫るような、微生物の謎を分子レベルで解明する基礎研究も進めています。研究成果は、積極的に学会発表や論文発表によって公表するように努めています。皆さんも、私たちと一緒に未知の遺伝子や酵素を発見しませんか?

病原性糸状菌や酵母に効く抗真菌薬を見つける!
病原性の糸状菌や酵母による感染症は人類を苦しめ続けています。抗がん剤の投与や、骨髄移植・臓器移植に伴う免疫抑制剤の投与、エイズ患者の増加などの要因によって深在性真菌症は増加しています。しかし、人類がこれまでに開発できた抗真菌薬は、作用機序を基に分類すれば20種類にも満たないと言われています。しかも、現在治療に使われている抗真菌薬は数種類しかありません。さらに、深在性真菌症の治療薬であるアゾール系抗真菌薬に対する耐性株が出現しており、世界的な脅威となっています。一方、糸状菌には農作物に病気を引き起こす種も知られています。稲いもち病や灰色カビ病などが毎年多くの被害を農作物に与えています。以上のことから、人類の未来のために新しい仕組みで効く抗真菌薬の開発が急務となっています。
病原性の糸状菌や酵母は、厚い細胞壁に覆われています。細胞壁は細胞を物理的に守るための構造体ですので、もし、細胞壁がうまく作れなくなれば菌は死んでしまいます。このことは、細胞壁の生合成を邪魔する薬剤は抗真菌薬や農薬となり得るということを意味します。
細胞壁は、「糖鎖」で出来ています。しかし、その生合成は複雑で良くわかっていないことが多いです。私たちは、細胞壁をつくる成分のひとつであるガラクトマンナンという「糖鎖」がどのように作られているのかを明らかにしようとしています。さらに、ガラクトマンナンの生合成を阻害することができる薬剤がヒトや作物に対する副作用のない抗真菌剤として、医薬や農薬に利用することができると考えています。自分たちで見つけたガラクトマンナン生合成酵素の立体構造を明らかにして、コンピューターシミュレーションによって阻害剤を見つける研究も進めています。

微生物のカタチを決める仕組みを解明する!
ヒトやネコの皮膚の病原菌であるスポロトリックス・シェンキーという糸状菌は、 自然環境や皮膚表面(20˚C~30˚C付近)では、その他の多くの糸状菌と同様に菌糸と呼ばれる細長い細胞形態(多細胞)をとりますが、 宿主の体内(35˚C~37˚C)に移動すると酵母のような丸い細胞形態(単細胞)に変化する性質を持っています。 このユニークな性質は病気の重症化と深い関係があることがわかっていますが、そのメカニズムはほとんどわかっていません。そもそも私たち人類は、微生物たちが「なぜそのような細胞形態をしているのか?」ということすら全く知らないのです。私たちはこの糸状菌の細胞形態が変わるメカニズムを解明することで、「細胞のカタチを決める要因は何なのか?」ということ を明らかにすることができると考えています。この仕組みを明らかにすることで、産業に使われる糸状菌のカタチを自在にコントロールできるようになるかもしれません。

発酵食品産業で役立つ有用な微生物を創り出す!
発酵食品には麹菌や出芽酵母、納豆菌などそれぞれの発酵食品に適した特徴をもつ微生物が使われています。これらの微生物の良い特徴を伸ばしてあげたり、悪い性質を除去することはより美味しい発酵食品の製造に不可欠です。 私たちはまだ誰も知らない「発酵に適した特徴」を決定付ける遺伝子の探索にチャレンジしています。 また、遺伝子組換えを用いない方法でそれらの特徴を改変することで、発酵食品産業でも利用しやすい微生物の創出を目指しています。
